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2010年5月16日 (日)

飼い主離れ猫離れ その2 押し入れから出てこない

 就職してから一月後、ゴールデンウィークを迎えるやいなや、私は急いで帰省をしました。ガチャ子さんはどうしているか、ガチャ子さんは元気か。親不孝な私は、親の心配をするより猫の心配をしながら帰ったことを覚えています。

 実は、気になる話を母から電話で聞いていました。私が家を出てからこちら、ガチャ子さんがご飯の時以外は押し入れの布団の間に隠って出てこない、というのです。

 体の具合が悪いのだろうかと心配しながら家に帰り、家族への挨拶もそこそこに押し入れの前に言って声をかけました。すると、「にゃああー」と大きな声で鳴きながらガチャ子さんが出てくるではありませんか。

 その様子を見た母は言いました。「このひと月、どんなに呼んでもご飯時以外は絶対に出てこなかったのに」。

 ガチャ子さんがうちの子になって以来、ガチャ子さんと私はほとんどの時間を一緒に過ごしていました。週に何回か行くアルバイト以外にはあまり外出することもなかった私は、ガチャ子さんにとって「自分の側にいて当然の人間」だったのだと思います。それが突然いなくなった。
 私が居なくてもご飯は食べさせてもらえるし、いじめられることもない。でも、構ってもらえる時間は減り、夜も一人で寝なければならなくなった。

 就職して、私の生活も大きく変わりましたが、それはすべて自分が望んだ結果。ガチャ子さんはそうではありません。訳がわからないうちに頼りにしていた人間が居なくなったのですから、ショックは小さくはなかったのでしょう。

 一月前、家を出るときにはあまり深くは考えませんでしたが、かわいそうなことをしたなと、その時に改めてしみじみと思ったことでした。

 休暇の数日間、ガチャ子さんを構い倒した私でしたが、休暇が終われば赴任先に戻らなければなりません。後ろ髪を引かれる思いで戻ったことを、今でも覚えています。

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