« 成長した?リンリン | トップページ | 場所争い その1 »

2015年9月 5日 (土)

アンズの夏、そして秋

 アンズの退院からひと月半経ちました。

 退院の前、動物病院の先生から「残念だけれど余命数ヶ月」というお話がありました。 アンズの病気は、免疫の暴走が原因。自分で自分の口内、腎臓や膵臓を傷めつけてしまっているのです。

 特に深刻なのが腎性貧血。腎不全の再末期に出る症状で、造血ホルモンを作ることができなくなってしまっていることが原因です。退院時のHCTの値は一桁。25を切ったら問題といわれる値が、一桁にまで下がってしまっていたのでした。

 貧血も深刻ですが、尿毒症のことも考えなければなりません。尿毒症への対処は皮下補液などによる水分補給。でも、これをすると貧血がさらに進むんですよね。

 当面考えなければならないのは、貧血への対応の方。具体的には輸血と造血ホルモンの投与とのことでした。造血ホルモンは効き出すまでにひと月くらいかかります。輸血の効果もひと月くらい。造血ホルモンが働き出すまで輸血でとりあえずつなぐ、ということなのだそうです。 ちなみに、余命数ヶ月というのは、輸血とホルモン剤投与をした場合の時間です。造血ホルモン剤は、2~3ヶ月で抗体ができて効かなくなってしまうのです(中には抗体ができにくい猫さんもいるそうで、1年以上比較的元気に過ごせたケースもあるようです)。

 アンズの残り時間が少ないことをお聞きしたときに先生にお伝えしたのは、苦痛を減らすことを優先したい、ということでした。そしてとりあえずは輸血、そして造血ホルモンの投与も始めてくださるよう先生にお願いをしました。

 ただ、状態はひどく悪かったものの、アンズにはまだ生きようとする力が残っていると私は感じていました。「食べたい気持ち」が消えなかったからです。

 3度目の入院の前、そして、経鼻カテーテルをつけて退院してきた後も、食べたいそぶりはずっとありました。空腹感は強かったのだと思います。でも、自分で口から食べるところまではいかれない。 ただでさえ体力が落ちているのに、空腹が加わったら辛さは倍増します。「食べたい気持ち」を受け止めることを大切にしていきたいとも考えました。

 退院以降、経鼻カテーテルはアンズの命綱でした。カテーテルからミルクを入れてもらうと空腹がおさまることがわかっていたらしく、私が台所でミルクの準備を始めるとそばに来ることもしばしばでした。

 ですが、アンズと経鼻カテーテルとの相性は今ひとつ。顔から頭にかけて留めつけられているチューブが鬱陶しいらしく、しばしば掻いてしまいます。それによって緩んだりずれたり。 さらに、鼻の中をチューブが刺激するらしく、くしゃみの連発。結果チューブが鼻から飛び出してしまうということが十日おきに起こりました。そのたびに病院に行き、軽い麻酔をかけてつけ直してもらわなければなりません。 また、チューブが細く、ミルクや水しか与えられない。そのミルクでさえつまり気味。薬の投与にも向かない。

 短期的な栄養補給や水分補給にはいいのでしょうけれど、何ヶ月かにわたってアンズの「食べたい気持ち」を受け止めケアし続ける手段としては、経鼻カテーテルは頼りないというのが正直な感想でした。

 ではどうするか。

 退院の前、先生から「胃瘻という方法もあります」というお話を伺っていました。 当初、胃瘻に対する私のイメージは悪く、いたずらな延命につながる治療法と思っていたのですが、いろいろ調べているうちに使い方次第ではアンズの今後の生活を支えてくれる有効な手段になる可能性が高いことがわかってきました。

 上にも書いたように、今後、尿毒症への対応のためにコンスタントな補液が必要になってきます。適量の補液によって辛さが和らぐことは、ガチャ子さんの時に経験済みです。でもそうすると、貧血が進む。それを緩和するには、栄養補給が大事になってきます。栄養不足になると、それが原因の貧血も進むからです。そして、そういう目的のためには、相性が悪く細い経鼻カテーテルより、ウェットフードやドライフードをどろどろにすることで与えられる胃瘻の方がかなっている。実際、腎不全末期の猫への対応の一つとして、胃瘻は広まってきているようです。

 けれども懸念材料もあります。麻酔のリスク、チューブ保護のために服を着なければならないことから来るストレス。様々に悩み考え、あれこれ調べたり試したり。

 その間、アンズの体調は幸いなことに輸血の効果が出て安定していきました。再び自分でゴハンを食べられるようになったのです。 そこで悩みがまた一つ加わりました。 胃瘻を作るにしても、今しなくてもいいのでは……。

 実際、お医者さんに「もっと悪くなってから、言い方は悪いけれど、最後の手段として胃瘻を作るというやり方もあります。ただ、それは猫にとって負担やリスクが大きいことではありますが。」とも言われました。

 そもそも、猫に胃瘻造設までするってどうなんだろう。たかが動物に、という意味で言っているのではありません。「今」を生き、先のことをあれこれ思い悩んだりしない猫に、食べられなくなったときのために体力のある「今」のうちに胃瘻を造設することに意味があるか、ということです。

 また、「食べられない」ということは、体が受け付けないということなのだから、胃瘻を作ってまで栄養補給をするのは不自然、という考え方もあるでしょう。

 でも、先に書いたように、アンズには「食べたい気持ち」がずっとありました。貧血がひどくなると「食べたい気持ち」が失せる猫さんも少なくないようですが、アンズはそうではなかったのです。

 入院前のひと月あまり、「食べたい気持ち」があるためリンリンと一緒にゴハンをねだりに来ていながら、ゴハンに口をつけることができなかったアンズ。空腹のままうずくまっていたアンズ。徐々に弱っていったアンズ。私の気づきが遅れたためにかわいそうなことをしてしまいました。

 末期の腎不全でありながら、数年をそれなりに元気で過ごしたガチャ子さんが私に教えてくれたこと。それは、「食べたい気持ち」は生きる力だということ。

 最後の最後には、栄養補給が苦痛軽減につながらない時が来ることでしょう。でもそれまでは、「食べたい気持ち」があり続けている間は、アンズの生きる力を支えたい。

 麻酔のリスクは、いまでも決して低くはありません。あるデータによると、今のアンズのようなコンディションだと3%くらいは麻酔から覚醒できないケースがあるようです。ただ、胃瘻造設に必要な麻酔は、骨折手術などと比べるとかなり軽いとのことです。一方、状態が悪くなってからだと7%後半にあがります。

 コンディションが悪化したアンズに、胃瘻造設の負担はかけたくない。今しないのならこの先もしない。造設するのなら、今。

 さんざんに考え、調べ、思いを巡らし。

 お盆明け、私は先生にお願いをし、アンズに胃瘻造設をしていただきました。

 幸いなことに、麻酔の悪影響もなく造設は終わり、今のところ大きなトラブルはありません。

 事前に服になれさせてはみたものの、やはり少々不満のようなので、どういうものなら良いのか試行錯誤を重ねました。

 今も口からゴハンを食べられる状態が続いているので、好きなドライフードを中心に口から普通に食べさせています。

 ステロイド剤や鉄剤はチューブから。水素が多く入っている水もチューブからある程度の量を入れることができるため、水分摂取量を気にして、あまり好きではないウェットフードを食べさせる必要もありません。これは、アンズにとっても私にとってもうれしいことです。皮下点滴の頻度も下がりました。投薬と注射のストレスからは解放されたことになります。

 最新の貧血の値は16台。輸血をしてなおこの数字。アンズのこの先を客観的に示している数値と、受け止めなければならないのでしょう。

 でも、今日のアンズはそれなりに元気です。食べて、水を飲んで、排泄もあります。首回りをなでたりコーミングをしたりするとのどを鳴らして喜びます。

 今年の秋がアンズにとって、そして私やリンリンにとってどのようなものになるのかはわかりません。なにがアンズにとって良いのか、そうではないのか。迷いは尽きないことでしょう。

 でも、アンズを支え、アンズに支えられながら、考え、悩み、リンリンも一緒に三人で暮らしていこうと思います。一日一日を大切に。

« 成長した?リンリン | トップページ | 場所争い その1 »

日常」カテゴリの記事